日本で株式会社を組織する場合は、商号に「株式会社」を含める必要がありますが、アメリカでも同じようにコーポレーションを組織する場合は、商号末尾に Corporation, Incorporated, Company, Limitedのいずれか、または、その省略形である Corp., Inc., Co., Ltd. のいずれかを含む必要があります。
既に州内に類似した商号の開始が存在している場合は、登記することができません。
類似の基準は「州務長官が他の会社と識別することができる」となっており、実際には州当局によって判断されます。なお、多くの州では「bank」(銀行),「bank and trust」(信託銀行),「insurance」(保険)など特殊な規制がある業種を商号に含めることはできません。
■Corp., Inc., Co., Ltd. の違いについて
Corporation, Incorporated, Company, Limitedはそれぞれ「会社」という意味を含んでいます。それでは、もう少し詳しくこれらの違いについて説明します。
- Corporation (Corp.)は、法律で定められた手続きを済ませ、法人格が与えられ、会社名義での取引や財産取得を認められた事業組織を表します。また、法人格は構成員と別の体(人格)が与えられており、構成員は有限責任である意味を含みます。
- Incorporated (Inc.) は、Corporation とほぼ同じ意味です。ただし、Corporation は法律で定められた手続きを済ませた結果を主体としているのに対し、Incorporated は法人化(corporate)の手続きを行っている(in- = into)プロセスを経ていることを主体としています。
なお、アメリカで最も使用されているのが Inc. です。
Inc.はLtd. とは違い、株主は株式に関する制限を持たないのが一般的であり、比較的、多数の株主を持つ大きな事業組織(またはそれを目指す事業組織)に使用されることが多くなっています。
- Company (Co.) は、「共にパンを食べる人」から転じて「仲間」が語源です。つまり、仲間による共同の事業体であることを表します。これは単なる仲間ですので、構成員が有限責任であるという意味を含んでいません。
- Limited (Ltd.) は、責任が有限であることを主体としています。つまり、構成員が有限責任である事業組織を表します。なお、アメリカでは、株主や株式に対し何らかの制限を設けた事業組織に使用されることが多く、比較的、小さな事業体が多くなっています。
なお、イギリスの会社はLimitedが含まれていることが求められます。一方で、Incorporatedが使用されているのは、アメリカとカナダです。
従って、Ltd. であればイギリスかアメリカの会社であり、Inc.であればアメリカの会社であることを印象付けます。
■Corp., Inc., Co., Ltd.の使用傾向について
実際に、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に2011年1月現在上場している企業(外国企業を除く)のうち、コーポレーションの商号末尾の傾向を調べますと、以下のとおりでした。 圧倒的に Inc. が多く利用されているのが分かります。
参考情報:ハワイ州商号規則
商号の付け方について、参考資料としてハワイの物をご紹介致します。お考えになる際のご参考になれば幸いです。
- 数字と、数字を表す単語および記号の場合
例:”Twenty-Seven, Inc.”と “27, Inc.”と”XXVII, Inc.”は類似商号となります。 - スペルが違うが発音が同じ場合
例:”Beach Days, Inc.” と “Beach Daze, Inc.” は類似商号となります。 - 事業体を表す単語のみが違う場合
例:例:”Sampson, Inc.”と”Sampson Corporation”と”Sampson, Incorporated” は類似商号となります。 - 2つの単語に挟まれる “a” ,”an”, “and”, “the”, “of”, “in”, “at”, “on”, “to” or “for” もしくはハワイ語の “da”, “ka”, “ke”, “na”, “la”は無視されます。
例:”Oceanside Pier Honolulu, Inc.”,と”The Oceanside Pier of Honolulu, Inc.”と”An Oceanside Pier for Honolulu, Inc.”は類似商号となります。 - スペースや記号は無視されます。
例:”ABC, Inc.” と”A.B.C., Inc.”と “A B C, Inc.”と”AB&C, Inc.”と “A*B*C, Inc.”は類似商号となります。 - 事業体を表す単語を2つ以上含む場合、その単語は無視されます。
例:“Acme Construction, Inc.” と “Acme Construction Company, Inc.”類似商号となります。 - 複数形のおよび所有格を表す”s”は無視されます。
例:“Acme Contractors, Inc.”と “Acme’s Contractor, Inc.” と “Acmes Contractor, Inc.”は類似商号となります。 - 一般的な省略形は同じと見なされます。
例:“Southeast ,と“S.E. Landscaping, Inc.”と “SE Landscaping, Inc.” と“S E Landscaping, Inc.”は類似商号となる。(Southeast, S.E.は南東の意味) - ハワイを表す単語“of Hawaii”, “Hawaii”もしくは省略形の “HI” は無視されます。
例:“Omni, Inc.”, “Omni of Hawaii, Inc.”, “Omni of HI, Inc.”, “Omni Hawaii, Inc.” , “Omni HI, Inc.”は類似商号となります。 - “Hawaii” と “Hawaiian”から始まる商号は同一と見なします。
例:“Hawaii Flower Bouquet, Inc.” と “Hawaiian Flower Bouquet, Inc.”は類似商号となります。