会社のしくみ
会社は、設立した州の制定法によって、その機関は定められます。州によって多少の差異があるものの、その大前提は変わりません。
下図のとおり、会社の「基本的意思決定機関」は株主総会です。株主総会は会社の基本的な経営方針などを決定し、その意思は株主総会が選任した取締役(directors)に引き継ぎます。
通常、取締役は会社の経営に当たるものですが、一人一人の取締役として機能するのではなく、取締役会によって業務執行に関する基本的事項を決議します。
歴史的にはほとんどの州で最低3名の取締役が主流でしたが、今日では1名または2名の取締役会を認める州が増加しました。
取締役会で決定した業務執行の意思は取締役会が選任したオフィサー(officer)に引き継がれます。
オフィサーとは取締役会に選任される会社の執行機関です。日本の商法では代表取締役やその他の取締役個人を指しますが、アメリカでは取締役とオフィサーは分離しています。
ただし、小規模の会社では取締役とオフィサーが同一人物であることが多いのが実情です。
ここで、「オフィサー」(officer)は直訳すると「役員」となりますが、日本語での一般的な解釈では「役員」とは「取締役」を意味するでしょう。アメリカ会社法の「オフィサー」は明らかに「取締役」とは異なるものですので区別する必要があります。従って、「役員」と表現し混同してしまうことを防ぐため、ここでは「オフィサー」と表記します。
オフィサーの内訳は州により異なりますが、典型的な例としては以下のとおりです。
・社長 1名
・副社長 1名または複数
・秘書役 1名
・会計役 1名
多くの州では、秘書役と社長の兼職を除き同一人物が2つのオフィサーを兼任できるか、もしくは同一人物が全てのオフィサーを兼任できるようになっています。秘書役と社長の兼任ができない州が存在するのは、2名のオフィサーが契約書その他の正式文書に署名する必要性を予知したうえのものです。
制定法でオフィサーの職名を指定していない州では、会社は秘書役補佐,会計役補佐ならびにその他制定法で言及されていない役職を設置することができます。そのオフィサーの名称は、最高経営責任者(CEO)、最高業務執行責任者(COO)、最高財務責任者(CFO)などです。
オフィサーの権限
オフィサーの権限は一般的に会社の付属定款にその概略が記載されますが、それは会社毎に異なります。多くの州ではオフィサーがどのような役割を果たすか権限がどのようなものかを定義していません。典型的な事例として以下に説明します。
(1) 社長
社長は、会社の主たる業務執行責任者であり、取締役会の管理の下で会社の事業と業務を全般的に監督し運営します。また、会社の契約書,証券およびその他の会社の法律文書に署名するのに適した役職です。
(2) 副社長
副社長は、社長職が空席の場合、社長が死亡したり無能力となった場合、また法律行為ができないかそれを拒否する場合、社長の業務を履行します。複数の副社長が存在する場合には選任時に定められた順序で、指定のない場合は選任の順序でその業務を履行します。副社長は、株券およびその他の会社の法律文書に署名できます。
(3) 秘書役
秘書役は、株主総会と取締役会の議事録の作成、会社の付属定款が要求する全ての通知がなされているかの確認、会社の記録と会社印の保管者としての役割、会社が合意した書類に会社印が適切に捺印されているかの確認、各株主の氏名・住所の登録、社長および副社長と共に会社株券に署名すること、そして会社の株主名簿を整備することの全責任を持ちます。
(4) 会計役
会計役は、会社の全ての資金と担保を保全・保管し、会社への支払いを受領し、領収書を発行し預金をします。